継承 (Inheritance)


論文の書き方

論文の書き方については種々の書籍が山ほどあり,それぞれに特徴があります.どれか一冊自分に合った書き方の本を持っていると,困ったときに参考にできると思います.論文の書き方はほとんどの場合,形式(あるいは書式)から入っていくと思います.文系であっても,理系であっても,提出先が決めている形式に合わせて書くことが,絶対的なものとなっております.形式をふまえた上で,それぞれの項目には何を書いていくかというのが書き方の次の段階になります.
ここでは,研究を始めることから論文が完成するまでを簡単にまとめておきたいと思います.
保健学系を主に書いておりますが,文系でも理系でも医療系でも進め方は同じです.

(困ったことがありましたら 問い合わせ から相談して下さい.)


1 研究の種類

自分の決めた研究課題を研究するにおいて,どのような研究手法を用るのが良いのかを決めなければなりません.そのためにはどんな研究方法があるのかを知っておく必要があります.

例えば,診療に用いる画像に問題があるとき,その画像の質をなんらかの方法で向上させようとします.第1にすることは,どのような問題が発生しているかを明確にすることです.つまり,何が原因で起こっている画質の低下なのかを見極めることになります.そのためには問題点を具体的に書き出してみることです.もし,書けないような状態であったならば,その問題はまだ抽象的なもので,何が問題なのかが問題なのであり,問題の本質を見つけることが根本となります.また,理論的に起こりうる問題であるかどうかも確かめなければなりません.

問題であると考える事と同様の現象が実験で確認できると考えるならば実験的な手法を用いるのが良く,誰かが解決している可能性があれば文献を調べる手法のが良い.また,多くの人に尋ねなければならないのであったら,アンケート調査をするのも良い.問題の質によって適切な研究方法を選択することが肝要です.

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1.1 文献的研究

技術の発達論や歴史的なことを調べるのには,やはり文献的研究が最も適しています.例えば「日本における医用画像生成の変化について」という表題について研究をするならば,まず,日本国内における文献を集める必要があります.国内の文献が集まれば,総てを読み,医用画像生成に関する文献を整理します.

次に,外国文献,特にアメリカやイギリスの文献にも目をむける必要があり,日本の医用画像について海外で発表されたものや,外国の雑誌に投稿されたものも少なからずあるはずです.特に日本での実験なり,調査であれば気を付ける必要があります.

最近の医用画像生成にはX線を用いるだけではなく,光や磁気,超音波を用いる事も考えられますので,「X線を用いる」を表題に加えて「日本におけるX線を用いた医用画像生成の変化について」に変更する必要がでてくる可能性もあります.また,X線を用いてもフイルムースクリーン系を用いるのか,デジタル系を用いるのか,によっても集める文献を考える必要があります.

文献を利用した研究では総ての文献を読み,読解することが第1にすることです.読解したことを比較,あるいは継承し,自分の頭のなかで組み立て直し,自分のことばで理解して論文にします.

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1.2 実験と実証的研究

医療技術に関して,ごく一般的になされているのがこの実証的研究といわれるものです.実験的な研究も二つに分けることができます.

コホート研究
数十年という時間をかけて調査や研究をおこなう疫学的な研究や,人類の健康に関する研究などをさします.例えば,放射線の被曝に関する研究のなかで,日本人が受ける全医療被曝などを推定するときの基本被曝量などを決定する材料なり,長期間(例えば生まれてから死ぬまで)の国民有意線量を推定することなどはこの分類に入ります.

このコホート研究は長い調査研究が必要になりますので,研究計画を入念にし,実験計画法に基づきおこなう必要があります.相当な訓練と,指導者が必要です.もし,研究計画に不備が発見された場合,その研究は全く無意味となることがあり,しかも,やり直しがきかないということになります.

応用学的研究
新しい機器や機具あるいは技法の開発,またそれらの新旧の比較など,数日から数ヵ月の実験により結果をだす研究から,数十年の年月をかけて結果をだす研究まで幅広く存在します.理系にとってはこの研究が最も親しみのある研究でしょう.

今までに積み重ねられてきた色々な研究の成果を,種々組み合わせて研究をしていくことになります.例えば異なった2系等のフイルムースクリーン系の比較評価をする場合は,物理的に評価する基礎実験的な研究と,臨床写真から評価する臨床的な研究になります.

物理的な評価は,色々研究されてきた評価方法(粒状性やコントラストなど)を用い,応用しながら研究し,臨床面でも同様に今までに確立されている評価方法を用い研究します.つまり,現存する技術や理論を用いそれを応用し,新しい分野の研究を発展させることになります.

また,現在の技法を改良し,臨床的に画像の質を向上させる場合などは,新しい技法による画像が現在一般に使用されている技法による画像に比較して,どの程度の向上があるかを客観的に研究する必要があります.(このように現在進行系で進めていく研究を前向き研究といいます.)

この場合も,客観的な数値として,統計解析を用いることが必要です.研究計画書を作成するときにどのような統計手法を用いるのか注意が必要です.

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1.3 調査分析

アンケート調査はこの分類に入ります.アンケート調査で最も難しいのは調査の対象をどのような団体にするか,また,調査項目はどの程度にするかと言うことです. 調査の対象はその集合を代表する集団であることが条件となります.

例えば,大学生に「医療に関連する職業を知っていますか」という質問をし,調査をするとしましょう.まず考えなければならないのは,どのような環境下でこの調査をするかということです.インタビューをすると仮定すると,文学部のみの大学の周辺で調査をする結果と,医療技術関連学科のある大学の周辺で調査をする結果は当然違ってきます.

また,多くの項目を調べ何が原因か,あるいはどの問題を解決すればよいかを見つけるには多変量解析の手法を用いる必要があります.このような統計解析を用いる場合,実験計画法に基づいて実験計画を立てる必要があります.

また,アンケートではありませんが,過去10年間分のX線写真の画質を調査し現在の画質と比較しようとするとき,現在の画質を基準として,どの程度の差があるかを一定の基準を作り分析していくことになります.(このように過去の事実を分析することを後ろ向き調査といいます.)

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2 問題点の発見

研究課題は問題点の発見からつなげていきます.身近な環境のなかで研究課題を見つけるのが最も簡単な方法です.研究課題は,問題点を解決する,疑問点を明らかにする,不明な点を明確にするなどを実験をしたり,文献を調べたり,調査をしたりして解決します.

卒論レベルの研究課題は普通研究指導教員からサジェスチョンを受ける場合がほとんどと考えますが,社会人の場合はそういうわけには行きません.というより,自分で決める必要があります.

時には先輩や同僚がサジェスチョンしてくれる場合も有りますが,ほとんどの場合は個人的に決めなければならないと思います.そのため.ここでは社会人が自分で課題を見つけることを中心に話を進めて行きたいと思います.

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2.1 身近な事柄から

一日最低8時間の労働がごく普通にあります.業務をおこなう中で,かならず小さな問題にぶつかります(大きな問題かも分かりません).この小さな問題が,研究課題となる場合がほとんどではないかと思います.職場での仕事のに関してでなくとも,趣味の一部でも,生活の一部でも研究課題となることは多々あると思います.問題に気がついたとき,「これは問題だ」と思っていても,仕事に一段落したときにはすでにその問題を忘れてしまっていることがほとんどだと思います.これが「問題」を発見できない大きな原因です.

疑問を見つけるには,好奇心や興味がなければなかなか見つかるものではありません.現在の担当している業務のなかで見つけるのが後の研究活動が最もし易いと考えます.どうしても興味が沸かない場合もあります.そんなときは担当している仕事とは異なった事について興味のあることを見つけます.仕事のなかに興味がなくとも,仕事に関係することはたくさんあります.

病院あるいは診療所は一つの社会ですので,一般の社会と同じ種類の職業があり,問題もあるはずです. 現在の仕事が好きということから研究をはじめることもできますし,嫌いということからも研究ははじめられます.つまり,嫌いな仕事を好きな仕事に変えるにはどのようにすればよいかを研究すればよいのです.

また,楽をするための努力も必要だと思います.この世のなかの文明と呼ばれる物は人が楽をするために努力をして作ってきたものなのですから.例えば自動車は,もっと早くもっと楽に目的地までいく方法はないだろうかという疑問から発明された物ではないでしょうか.

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2.2 問題点をノートする

気がついたときにノートなどに書き留めておく必要があります.それは,人間は思い付いたことをそんなに長く憶えておくことができないからです.

以前は京大型のカードを用い,いつでもどこでも思い付いたときに書き留めることにしていました.まず,50枚のカードを鞄の中に入れていますし,職場と家の机にはいつもメモ用紙をおいています.
これに加えて,現在はノートを一冊常に持って歩いております. パソコンの中に書類として保存することも可能かとは思いますが,たぶんメモの存在自体を忘れてしまうと思います.

仕事中に気づいた事をメモ用紙にメモ書きした後,その用紙を大事なものと思い,きれいに折って服のポケットに入れたり,手帳の間に入れてしまうと,メモしたことを忘れてしまいます.メモ用紙は丸めて衣服のポケットに入れるとか,邪魔になるような状態でどこかに入れておくとよいでしょう.そうするとメモ用紙が手をポケットに入れたときに等に「これは」と気がつきます.これがメモ用紙を用いるときのコツだと思います.

仕事に一段落したとき,ポケットに手を入れメモに気がついたら,それを出して考えましょう.考えた結果を他のノートやカードに書き移し,整理するのがよいでしょう.このように気づいたことを常に考え,問題が解決するまで考えることです.次の節で問題を解決する方法について詳細に述べたいと思います. 現在はこれらメモしたことをパソコンに入力しております.特にデータベースソフトに入力し,KJ法等の問題解決手法に用いる材料とすることができます.

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2.3 問題の解決

問題解決の第一歩はその問題について考えることです.考えることによって問題の本質が見えてきます.一つの問題について考える時間は問題の質によって数分から数年と言うこともあります.より短い時間で問題を解決するには次の二つの方法があります.

問題なり疑問なりを小さく分けることから始まります.一つの解決に向けての取り掛かりを作ることです.そこで,問題をどのように分解するかを知る必要があります.

まずは消去法です.この方法は問題の中から知っていること,解決できることを消去していき,最後に残った問題をブレーンストーミングなどの問題解決手法を用いることです.

ブレーンストーミングをはじめる前に,問題に関係する本や文献を読みます.それは最後に残った問題をもう一度解決できるような小さな形の問題に分けるためです.

とにかく,問題の本質は一体どのような問題なのかを見つけることが第一にすることです. 問題を具体化するために書いてみます.原因と考えられることを総て書きだします.一つの事柄を一つのカードに書きます.そして,その中で最も重要な問題を解決することを考えます.

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3 時間配分と手順

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3.1 全体の時間

一人でこつこつする場合,研究課題(題目)を思い付いてから,論文になり学術雑誌に掲載されるまでにかかる時間は,おおよそ3年程度と見ておくのがよいでしょう.

もちろんこれは著者が考える範囲で順調に,しかもゆっくりと進めた場合のことです.卒業論文や,学士の学位申請論文ではもうすこし短くなり,1〜2年程度と考えておけば良いでしょう.

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3.2 研究課題の決定

第一にすることがこの題目の決定です.題目は研究の根本であり,研究の目的を明確にそして端的に表していなければなりません.一日で決定することもあるでしょうし,下調べをしていくうちに何度も変更しなければならないこともあります.また,論文が完成してから変更することもあります

この研究課題の決定については別に項目を立てて記載していますので参考にして下さい.

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3.3 先行研究の調査

アイデア(思い付き)を研究課題にするために,下調べをします.第一に研究課題となることが,すでに他の人によって取り上げられ,研究されていないかを確認する必要があります.研究されていなければどんどん進むとよいでしょう.

しかし,同類の研究がされていた場合,全く同じであれば研究を諦める必要があります.よく考え,異なるところがないか調べます.異なるところがあれば,それら同類の研究を参考あるいは土台として進歩させることができます.

研究課題がおおよそ決定したときに,関連する研究について文献を調べます.そして,自分の研究の裏付けや参考にします.これらのことを調べるのに6ケ月〜9ケ月の期間が必要だと考えます.

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3.4 研究計画書の作成

下調べで調査したことを土台にして,自分の研究に対する詳細な研究計画を立てます.できたらこの研究計画は書面にし,研究計画書とするのがよいでしょう.総ての調査(下調べ)が終わっているならば作成は3ヵ月程度で終了します.

指導教員であるとか先輩であるような適当な指導者がいる場合はもうすこし短くなります.

研究計画書を書いていくうちに疑問や不明な点がかならず現われてきます.このときに全く新しい知識を吸収する必要がでてくる場合があります.できるだけ初歩の易しい専門書から読むようにすると早く理解できます.

特に,研究計画書を作成している時の不明な点や疑問は具体的なものですから,何をどのように調べると理解できるかが簡単に分かります

大学院受験用の短い研究計画書の書き方のページも参考にしてください.

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3.5 統計解析

研究計画を立てるとき,大切な一つが統計解析です.実験的な手法を用いる研究であっても,大規模な調査であっても,全体を示すには統計的手法によりサンプルから全体を予測する必要が有ります.

このため,母数とサンプルとによって,その評価手法が全く異なってきますので注意が必要です.研究の途中で統計手法を変えることはできないと考えておくほうがよいと思いますので,正しい統計手法が用いられるように研究計画の策定をしておきましょう.

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3.6 実験・調査の実施

応用科学的な実験的研究ならば実験計画書のでき具合により,実験の成否が決定します.研究計画のできがよければ実験も短くてすみます.もし不都合が生じたならば実験計画をもう一度考え直すのが最も簡単な方法です

研究計画書が完成するとその研究計画書に基づいて実験あるいは調査を開始します. 実験はあくまでも研究計画書に記された方法にておこないます.簡単な実験で修正がなくうまくできるようでしたら,短い場合1週間程度で時間が終わることになりますが,複雑な実験の場合は何ヶ月もかかることになります.

それは,もし実験をしているときにその実験方法に不備が発見されたとき,不備の部分修正ができるからです.行き当たりばったりの実験をすると不備の上に不備を重ねてしまうことがあります.

常に修正がおこなえる状態で実験をするには,不備が発見されたときに研究計画書を書き直し,もう一度実験をするように心掛けることにより,同じ過ちを繰り返すことを避けられます.

不備を発見したときは次の項目について考えてください.

この考え方は

1. 事実に基づいているか

2. 推測によるものか

3. 間違った考えを出発点としていないか

これらの項目を完全にするには,研究前の下調べを入念にすることが最も大切なことですが,慣れていないとなかなかできるものではありません.不備な点,不明確な点が現われたら,研究計画書に戻り,それでもまだ解決できないときはもう一度文献を読むことに戻ってください,新たな発見があると思います.

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3.7 論文作成

論文は決められた形式,書き方によって書きます.それらは実験結果を含め,投稿する雑誌の投稿規定に準じて作成します.(学校に提出するときは,学部等の書式がありますので,先輩の論文等を参考にするのがよいでしょう.)

親切な雑誌では,考え方から要約,本文,そして図表の書き方まで規定しています.論文そのものは,研究計画書で「目的」「方法」の項はほぼできあがっているので,後は「結果」,「考察」,「結論」を書き加えればおおよそできあがりとなりますので 1ケ月〜6ヶ月程度の長さになると思います.

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3.8 研究発表

研究発表は論文の作成の途中でおこないます.研究発表には口述発表とポスター発表がありますが,論文作成にかかる時間にはあまり関連は無いと思います.研究の内容に対しての反響は見られますので,論文掲載の可能性をある程度把握することはできます.

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3.9 論文提出

学術雑誌には雑誌固有の投稿規定があります.現在ではほとんどが電子投稿になっておりますが,まだ,原稿を送付する場合や,原稿で送付し,加えて電子投稿もする場合もあります.原稿を送付するとき,かならず簡易書留で送付し,定められた枚数,部数,書式を守って提出してください.

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3.10 論文掲載

書きあげた論文を掲載したい雑誌の編集委員会に送付します.ここで数名の人により審査が(査読という)おこなわれます.この査読に時間がかかる場合があります.著者の経験では査読結果が送られてくるまでにまる1年かかったことがあります.国内の学会では長くて6ヵ月程度と考えておけばよいでしょう.

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4 文献の取り寄せと読解(下調べ)

1冊の専門雑誌の中で自分の研究課題と関係する文献を一つ見つけて読解することから始まります.

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4.1 専門雑誌を読み参考文献を引く

専門雑誌は1年に1冊その1年間に発行した雑誌の総ての索引を載せています.この索引を利用して自分の研究課題の文献を見つけます.ある程度研究を重ね自分の研究材料や研究目的が定まっている場合は,目的にあった専門書を読むことで十分です.しかし,まだ研究課題などがはっきり決まっていない場合は,より多くの種類の専門雑誌を読む必要があります.

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4.2 参考文献を読み参考文献を引く(孫引き))

文献を読むと興味深い部分があります.その部分の内容が誰によって書かれているかを確認します.その文献の著者によって書かれている場合は,その文献をそのまま参考文献にして下さい.他の著者の文献を参考にしているときは,[1]あるいは1)の様な記号がついていますので,参考文献の項目を見て同じ記号の文献の著者名,表題,雑誌名,巻,号,頁,発行年を控えます.

その雑誌を購読されているならばすぐに調べて手元に置いておきます.もし手元にない場合は図書館あるいは発行している雑誌社に依頼し,取り寄せます.このように文献から他の文献を引くことを孫引きと言います.ただ,この孫引きをするときは,かならず原本を入手し,読解しておく必要があります. 現在ではWebで雑誌社から直接入手することが可能です.

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4.3 図書館で文献を検索する

Index medicusという本があります.この本は世界中で書かれた医学関係の論文をまとめ,本にしています.この本には索引と要約,著者名が掲載されています.1994年版で厚さ6cm程度の本が17冊あります.この本は医学系の大学の図書館あるいは研究所の図書室にありますので自分の身近なところで捜して下さい.

また,検索用のコンピューターが設置されている所ではMEDLINEと言うデーターベースを検索すると良いでしょう.どちらもキーワード検索をおこないます.

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4.4 コンピューター(Web)で文献を検索する

最近はインターネットを利用して文献の検索が容易にできます.医学系の文献検索はアメリカ国立図書館の文献データベースであるPubMedを用いるのが,最も一般的です.言語に関係なく登録されている雑誌は検索でき,ほとんどが要約つきです.国内では独立行政法人科学技術振興機構の運営するデータベースである文献情報提供サービスにアクセスして検索をするのを進めます.

また,学会誌・学術専門誌を統合し,文献を全文提供する会員制の医学・医療の総合サイトであるMedical Onlineもあります.いずれにしてもキーワード検索になります.(インターネットについては専門の本をお読みください.)

役立ちリンクにもリンク先を記載しておりますので,参考にしてください.

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4.5 知人に頼む

環境的にどうしても自分で検索できない,あるいは文献を取り寄せることができない場合は,知人や友人に依頼することになります.特に,研究所に勤務する友人や大学に勤務する友人がいると大変力強いものです.研究所や大学では図書館や図書室を十分に活用できるからです.大学の図書館は,大学が違っても 入館できる手続きを取っておくのがよいと思います.

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4.6 文献の整理

文献を取り寄せ,読解すると今度は必要な部分をまとめる必要があります.コンピューターは文献を整理するのに大変役に立ちます.データベースソフトを利用し文献を整理しておくと,論文を実際に書くときにも便利ですし,参考文献の頁を書くときにも非常に便利です.文献整理用のソフトウェアーもあります.

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5 論文を書く

文献の調査も実験も終わると,いよいよ論文の作成となります.論文を作成するには論文の流れを知っておくと便利です.流れには論文そのものの構成に対する流れと,論文の作成の流れがあります.以下に分けて述べます.

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5.1 書いてみる

論文は先ず書いてみることから始まります.ここで参考にするのが研究計画書です.調査や研究を始める前に通常は研究計画書を書きますが,その内容のほとんどが論文の内容になります.その研究計画書の項目を使って,まずは「目次」を作ってみましょう.
「目次」は最後に作るのでは??と疑問をもたれるかもしれませんが,仮の「目次」を最初に作っておきます.Maind Map等のソフトウェアーを用いると便利です.

大学院進学の目的である研究計画書の書き方のページでも述べておりますが,研究計画書は提出する分と自分で持つ分の二種類を書いておきたいものです.論文を書くときは後者である自分で持つ長く書いた研究計画書を用いてください.
正しい「目的」,で「方法」が間違っていなければ,調査・実験で得た「結果」は論文にそのまま使えるはずですから,研究計画書から「目的」,「方法」,「結果」,「結論」までは書けますので,後は考察を残すのみとなるはずです.

論文を書くときの注意として,他人の論文を「盗作」すること,一部を「剽窃」したり「抜粋」することは慎まなければなりません.ただし考えを継承することは必要なことです. はじめて論文を書くときはどうしても「助言」や「指導」が必要になります.
身近な人で論文を書いたことのある人を見つけだして助言が可能であるかどうかを尋ねてみましょう.書いた論文を直接持っていってもなかなか簡単にはみてもらえないと考えたほうがよいでしょう.

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5.2 論文作成の基準

卒業論文や修士論文は大学あるいは大学院で定められた規定があります.学術論文は各学術雑誌には各々に規定された投稿規定があります.この投稿規定を無視すると,内容を読まずに返却されることもありますので,最低限度投稿規定を遵守するように心掛けてください.投稿規定は,雑誌により異なります.

B5一頁に書かれているような短い規定から,A4四頁に及ぶ長い規定まであります.相対的に長く書かれている規定は非常に親切にできています. 投稿規定は学術雑誌ごとに異なっていますので,投稿する雑誌の投稿規定を熟読してください.一つで良いですから英語の雑誌の投稿規定を手にいれて訳してみるか,訳した冊子を入手して熟読してください.日本の雑誌の投稿規定に比べてとても詳しく丁寧に,そしてやさしい表現で書かれていますので非常に参考になります.

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5.3 標準的なならび

論文の構成について述べます.右側の数字は論文を書いていくときの順序を示します.

一 表題 6
二 氏名,住所,勤務先 7
三 要 旨 5
四 Key wards 9
五 本 文 1
六 謝 辞 8
七 参考文献 4
八 図 表 3
九 図表の説明 2

論文は雑誌に掲載されたときの順序とは全く異なった順序で書くのが一般的です.また,研究計画を書くときとは違った順序でもあります.次節より第十三節までに詳しく書いておきますので参照してください.

最も早く論文を投稿する雑誌の規定にあった形で書き上げるのには,その雑誌に掲載されている論文をいかにたくさん読むかにかかっています.読むことによって自然と書くことも身に付きます.ただ,小説を読むように速読で読むのではなく,隅から隅まで精読してください. 論文の標準的な並びと内容の一覧をつけておきます.

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5.4 本 文

本文は研究計画書を基に実験した結果とその考察および結論を書きます.本文は「はじめに(緒言)」,「材料および方法」,「結果」,「考察」,「おわりに(結論)」で構成されています.それぞれについて詳細に説明します.

はじめに(緒言)

研究をするにはその研究がどのように人々に役立ち,学問的にどのような利益があるのかを述べます.これが研究する意義です. これまでの他の人の研究を交え過去の研究の欠点や,未解決の部分を述べ,その問題を解決しなければならない理由を述べます.そのためには論文の目的を明確に,しかも分かりやすく書く必要があります.

材料および方法

研究論文の最も大切なことは,論文を読んだ人が同様の研究を追試できることにあります.そのためにはこの「材料および方法」に上げることがらはすべて明確に列挙する必要があります. 実験の場合,材料はどこから手にいれたか,装置はどこの会社のどの装置を用いたかなど,できるだけ具体的に上げておくのがよいでしょう.
調査の場合においても,調査方法はどの手法を用いたか,そのための資料はどのように集めたかなど,できるだけ具体的に上げておくのがよいでしょう.
方法を書くのは簡単なようでわりと難しいものです.書いてあるとおりに実験や調査が他人によってなされることが可能でなければなりません.

結果

実験あるいは調査にて明確になった事実のみを書き,意見などは一切含みません.結果を長く書く必要はありません.できたら図や表を用い,できるだけ具体的に短く書きます.

考察

考察は論文本文の中で最も重要なところであり,この考察のみにおいて著者の意見を述べることができます.他のところは事実のみを書きます. 論文を書いていて行き詰まるのは,たいていがこの考察です.先ず,考察に書くことはなにか?から始まります.
研究方法や材料に関する問題点や研究のコンセプトにかかわる問題点等を掲げて,その解決方法や取り組みが正しいことを述べることも考察の大事な一面です.
また,過去の研究結果との比較で違いが現れたときの正当な理由を述べることも必要ですし,他の同様の研究に比較して,より精度が上がっていることを述べるのも良いでしょう.

おわりに(結論)

結果をふまえ,その結果から目的に対してどのようなことが導きだされるかを書きます.目的が達成されたのかどうか?達成された場合はどのような貢献があるのかなどを書きましょう.

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5.5 参考文献

参考文献は論文の本文を書いていくときに参考にした事柄の掲載されている書物や雑誌を,投稿する雑誌の投稿規定に示されている書き方を厳守して書きます.卒業論文や修士論文の場合は前年度の論文を参考にするのが良いでしょう.

参考文献の掲げ方には2種類あります.一つは著者の氏名を「あいうえお」順に掲げる方法で,二つ目は論文本文で参考にした順です.一般的には後者の方が多いようです. カンマ(,)やコロン(:)の使い方まで規定されていますし,著者の氏名の人数も規定されていますので,細かいところまで投稿規定を読んで下さい.

一編の論文に用いる参考文献の数は10編程度が標準的で,少ない場合は3編程度です.参考文献の種類によって論文の価値もおのずと決まってきますので気を付けて引用してください.

使用する参考文献の年代にも気を付けます.同様の内容を述べている論文でしたら,できるだけ新しい年代に発行された論文を用います.10年以内に発行された論文でしたら申し分ありません.

口述発表の抄録は参考文献にはなりません.理由は,発表当日口頭にて発表した内容と抄録の内容がことなる場合が多々あるからです.また,口述発表では抄録の訂正ができるからです.

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5.6 図 表

科学論文の投稿では,最近は電子投稿が殆どになってきましたし,卒業論文や修士・博士論文においても殆どが印刷済みの仕上げたものを提出することになります.そのため, 図,写真およびグラフ(まとめて「画像とします)も電子版で提出あるいは投稿することになります.

画像については解像度(1インチあたりの点の数),大きさ(縦x横 cm),濃度分解能(白から黒までの間を何段階に表現するか),ファイル形式(ファイル名の'.'以下の3から4文字)が規定されている場合が殆どです.

解像度は300dpiから1200dpiの画質が必要とされることが多く,写真とグラフでは解像度の規定が異なる場合があります.これも投稿規程で規定されております.

大きさはキャビネ版程度の大きさが主ですが,これも投稿規程で規定されております.

濃度分解能は普通8ビットで256段階が一般的です.また,まだ殆どの場合白黒の画像が基本となります.

ファイル形式も投稿規程で規定されていますが,特に雑誌によって異なりますので,気をつけてください.一般的にはeps, jpeg, pdf, tiff等があります.

表は文章の一部として書きますが,これも投稿規程で詳しく説明されていますので,投稿する雑誌の投稿規程を遵守してください.

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5.7 図表の説明

図や表の表題と説明は,日本語の論文の場合,日本語と英語が必要な場合と,英語の場合とがあります.実際に掲載されるときは英語のみで掲載されます.

その理由は要約と同様に日本語を理解しない人々が,その論文を読んだときに英語で書かれている要約と,図と表の説明を読んだだけで意味が理解できるといいうことです.そのためには要約と図表の説明のみで論文が理解できるように書いておきます.

図の説明は図そのものを説明しますので,図と説明文とは別なものと考えます.そのため文頭に「Fig. 1.」と言うように書きます.「Fig」は「Figure」の略で,そのすぐ後の「.」は「ure」を略したとの意味です.「1」は図の番号で,その後の「.」は文の終了を示すピリオドです.

ところが,表は文章の一部ですので書き方が図の説明とは異なります.「Table 1」の様に書きだし,「.」を用いず説明文を書きはじめます.その後に表を書きます.表の略語などに「§」などを付け,説明をします. 実際には投稿する雑誌によっても異なってきますので,投稿規程をしっかりと読むことを希望いたします.

投稿する雑誌によって,図表の説明を非常に短く書かなければいけない場合と,結構長く書いてもかまわない場合もありますので,これも投稿規程を読む必要があります.

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5.8 要 旨(要約)

要旨はかならず書いておかなければならない幾つかの項目があります.目的,方法,結果,結論の4項目です.

要旨は本文の内容を忠実に表現する必要があります.本文にないことは書かないのが原則です.

ほとんどの日本の雑誌では日本語と英語(Summary or Abstract)の要旨または要約の著述が必要です.要約は日本語以外の言語を使用する外国人に対して,日本語の論文であってもその内容が理解できるようにするためのもので,かならず英語で書きます.

英文で書くにはいくつかの方法があります.まず,日本語で書いたのち英訳するのが一般的です.英語がにがてな人は,英語が得意な友人に翻訳をしてもらうことも可能だと思います.また,翻訳を専門とする会社もありますので捜してみてください. 雑誌によって文字数がことなり,規定のないところから200文字程度の所まであります.

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4.9 表 題

表題は本文の内容を明確に表していることが必要です.本文の内容を適切にしかも端的に表していることが条件となります.また,余りにも長い表題は読む気を無くさせますので要注意です.

日本の雑誌に投稿するときは日本語と英語が必要です.日本語の表題を英語に訳すときに注意することがあります.日本語ではよく「〜の研究」と言うような表題を付けます.研究論文を研究専門雑誌に投稿するのですから,研究が当たり前であるという考えが英語雑誌への投稿では当然と考えられており,一般に研究を英語にしたstudy やinvestigate などの単語を表題に使用することはほとんどありません.

表題は研究課題とは違うと考えてもらうのが良いと思います.研究課題はあくまでも仮の論文題目であると認識するのが良いと思います.研究を進めていったり,論文の作成を進めると,どうしても初期の研究課題から内容や,目的がずれてしまいますので,論文の表題は最後で最終的に決定してください.

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5.10 氏 名

著者名も日本語と英語で書きます.要約の英文であるSummaryと同様に氏名,施設名,所属と住所はデーターベースに登録されるからです. 論文の内容を良く理解した人のみを書くべきです.ただ校閲しただけの人は謝辞に入れるべきでしょう.

氏名は大変重要ですし,共同研究では研究者の名前を掲げるのに順序があります.一般的に論文の著者(本人)を筆頭に書きます.次に,共同研究者の重要度から2番目,3番目と書きます.日本の論文では最後に教授の名前や上司の名前を書いたりしているのが多いようです.

人数はあまり多くないのがよいでしょう.雑誌の投稿規定に人数を規定している場合もあります.一般的には6名までと考えておくのがよいでしょう. 住所と施設名および所属は確実に届く住所を確実に書いておきます.雑誌の編集係に送った論文の受取書が送られてきます.論文が掲載されるまでには数回のやり取りがありますので,職場が変わったときには気を付けてください.

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5.11 謝 辞

この謝辞は色々手伝ってもらった方や,金銭的助成をしてもらった所への感謝を表すために謝辞があります.謝辞で最も難しいのは第十節の著者名の欄に書くべきかこの謝辞に書くべきかと言うことです. 例えば,研究助成金により研究がなされたとき,写真やグラフの作成,統計解析,ワープロ入力など,共同研究者ではないが重要な役割をはたした人達に感謝しましょう. 図や表の作成を手伝ってもらった人,あるいは文章を校閲してもらった人などはこの謝辞に入れるべきだと考えます.

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5.12 キーワード

自分勝手のKey wardを書かないことが基本です.Key wardは論文をデーターベースに登録するときに一緒に登録し,文献検索のとき,このKey wardを用いて検索します.自分勝手に考えたKey wardを書いておくと,検索時に検索できないことになります. Key wardsは総て英語で書くのが基本です.Key wardsは基本的に5個以内です.そして大きな研究範囲から小さな研究範囲の順に書いていきます. さて,Key wardsはどのようにして決めればよいのでしょうか.やはり何かを基準にしそれを参考にして書くべきです.Key wardsを英語で書くことにヒントがあります.世界で基準となる英語のKey wards集を手にいれることです.

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5.13 ヘッダー,フッダー

最後の仕上げです.電子投稿が増加していますが,まだまだ原稿を送付する場合もあります.このとき,ヘッダーには,もし原稿がバラバラになった時のことを想定して,一連の論文が何について書かれているのかを明確に書いておきます.例えば表題を短くして書いておくのが最も一般的です.匿名にて査読するのが一般的ですからこのヘッダーには著者名は書かないようにします. 次にフッダーです.ほとんどの場合ここには頁を書きます.1頁の始まりは本文の「はじめに」の項になります.つまり,表題,氏名,要約には頁をふらないのが原則です.

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6 論文仕上げ

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6.1 論文の投稿

学術雑誌には雑誌固有の投稿規定があります.定められた枚数,部数,書式を守って提出してください.原稿を送付するとき,かならず簡易書き留めで送付してください.

電子投稿の場合,完全に仕上げて,印刷のレディー版をpdfファイルで投稿する必要もありますので,pdfファイルを作成するソフトウェアーは入手しておきましょう.

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6.2 論文の査読と訂正

査読結果は次の4つの結果の一つが書かれてきます.

1. すぐ掲載する.

2. 一部書き直して掲載する.

3. 書き直してもう一度審査する.

4. 掲載を拒否する. の段階で返事があります.

「すぐ掲載」の時で約3ヵ月,「一部書き直して掲載する」の時は,掲載されるまで6ヵ月程度,「書き直してもう一度審査する」の時は1年程度掲載まで時間がかかると考えるとよいでしょう.

加筆訂正 加筆訂正を要求されたときは,査読者の意見を参考にして書き換えることを進めます.また,著者主張が査読者に上手く伝わっていない場合は,ほとんどが著者の書き方に原因が有るように思います.分かりやすいように書き換えるのが良いと思います.

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7 まとめ

論文を書くことは根気がいることですが,一編の論文を書くことにより,研究課題を見つけてから論文が掲載されるまでの手順が理解できます.複雑な規定ではありませんので一度理解するとつぎの研究が簡単に実行できると思います.そこには研究課題を見つけるインスピレーションのみが研究者が見つける問題です.そして根気良く問題解決に臨んでください. そして,できるだけ多くの人に意見を聞き,論文の完成度を上げてください.

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